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『ローマ人の物語』 塩野七生著

 塩野七生は第2巻『ハンニバル戦記』のなかで、「読者へ」として次のように言っている。歴史の対し方について、第1に自己の考えの例証として使うやり方、第2に人間の所行や社会のシステムを叙述し、そのプロセスを追って行くことで歴史の真実に迫る、以上の2通りがある。塩野は第2の方法を選択し、いかなる思想でもいかなる倫理道徳でも裁くことなしに、無常であることを宿命づけられた人間の所行を追っていきたいという。ローマは都市国家から帝国へ、政体が王政、共和政、帝政と変わって行く。『わが友マキアヴェッリ』によると指導者に求められる三大要素は、力量、運、そして、時代の要求に合致することであった。カルタゴの名将ハンニバルを打ち負かした若き救国の英雄スキピオ・アフリカヌス。マリウス派を処罰者リストをつかって根絶し、元老院体制を再構築した恐怖の独裁官スッラ。地中海をローマの内海にした凱旋将軍であり、カエサルと縁戚であるにもかかわらず元老院体制派にまつりあげられたため悲運の死をとげた、偉大なるポンペイウス。ガリアの部族をローマ化し、終身独裁官となって広大なローマ世界の統治能力を回復しようとした天才カエサル。ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥス。カプリ島に隠遁した人間嫌いのティベリウス。恐妻家のクラウディウス。ギリシャ文化に憧れていたネロetc…。「私が愉しんで書いているのだから、読むあなたも愉しんで読む権利は充分にある。プロセスとしての歴史は、何よりもまず愉しむものである。」 (佐々木 優)