STUDENTS & TEACHERS いち押し BOOKS


『アダルト・チルドレン 』 西山明著 (三五館 1995.12)

 私が、アダルトチルドレン(以下AC)に興味を持ち始めて今まで何冊もの本を読んできたが、この本ほどACに関してわかりやすく、読みやすい本はなかった。第1に、4人ものACの人たちを取り上げ、いろいろなACを紹介することによってACが多種多様であるということが学べる。第2に、その多種多様な中で学ぶ専門用語の充実さである。ACに起こりうる症状、その症状から派生する語などさまざまな専門用語が学べる。ここ数年の間にACが取り上げられるようになって言葉ばかりが先走り、ACは根本には「アルコール依存症の家族で育った子供」という概念があることも知らずに深入りしてしまう。この本では、根本から応用まで学べ、とてもいい一冊であると私は思う。
(4年 西山 貴浩)


『おかしな男 渥美清』 小林信彦著(新潮社 2000.4)

 ぼくは読書に関しては、まったく雑食動物であり、手当たり次第に読み漁るタイプである。ひとに薦められるような本は少ないが、原則はそれなりにある。何よりもまず読書は、単純明快に愉楽でなければならないと言うのがぼくの考えである。そんなぼくが新刊が出ると読まずには済まない作家が何人かいる。そのうちの一人が小林信彦である。小林は単なる小説家ではない。彼は類い稀な喜劇研究家でもあり、若き日には初期のTV番組の制作現場にも参加している。そのとき出会ったのが、後にフーテンの寅さんで一世を風靡した渥美清である。その評伝とも称すべき『おかしな男』が今春出た。著者はまだ売り出し前の渥美と知り合い、意気投合はするが、決して相手に惚れすぎはしなかった。この手の本の難しいところは、対象とのスタンスをどう取るかにある。これを詰めすぎると、つい目がくらみ、単なるヨイショに惰してしまう。明敏な著者は、<自らが見聞したこと>のみに立脚して不確かな噂や風評には一切取り合わない。その結果稀に見る傑作が生まれた。喜劇役者は私生活では、おおむね無愛想で無口な人間が多いと言われる。優渥美もまたその例外ではなかった。タイトルが「おかしな」という平仮名になっているのは意味深長である。これには可笑しなというのと、訝しなという二重の寓意が隠されているのだろう。俳優渥美清は寅さんであることによって、可笑しな人間を演じ続けなければならなかったし、その一方で本名の田所康雄としての生き方を見れば、訝しな人間だったと言えるだろう。小林はこの辺の機微を十分に捉えながら、程良い距離をを保ち、しかも渥美清という複雑な人間を過不足なしに描くと同時に、若き日のこの作家自身の自伝的青春譜にもなっているのもよい。これを機に小林の小説がいくつか再読されるといいと思う。口の悪い福田和也が百年後には大作家として評価されるだろうとまで、激賞しているくらいだから、面白くないはずがないからである。 (経済学部 林 辰男)