この本よんだ10


『岡村昭彦報道写真集』 講談社1986.5

 岡村昭彦は主に1960年代から1970年代中ごろに活動した国際報道写真家である。彼は1929年(昭和4年)東京に生まれ、1962年(昭和37年)PANA通信社に入社し、同通信社移動通信員としてバンコクに赴いた。その翌年から写真を撮り始めて、報道写真家としては34歳になってスタートした人物である。後に南ベトナムの前線に従軍し、1965年(昭和40年)にPANA通信社を退社、当時世界のフォト・ジャーナリズムの中心的役割を果たしていた『LIFE』誌と契約し、特に戦争写真家として同誌に登場するという経歴を持つ。また彼はアフリカにも渡り、西アフリカ・ナイジェリアの反乱であるビアフラ戦争を中心にアフリカの状況について取材している。後年バイオエシックスやホスピス問題に取り組み、輻広く活動していたが、1985年(昭和60年)3月54歳で急逝した。本書はベトナム戦争、ビアフラ戦争の報道写真を中心に、岡村昭彦の活動の軌跡を構成・編集した写真集である。編集者は「本書に選ばれた写真は戦争の惨劇にとどまらず限りない人間への愛着を表明している」と述べているが、一枚一枚の写真に存在しているインパクトは強烈である。またこれらの写真の受け取り方は人それぞれだと思う。本書の一読をお勧めする。岡村昭彦は、ジャーナリストとしては色々と物議を醸した人物のようであるが、本書を契機にジャーナリスト、ジャーナリズムの世界をのぞいてみるのも面白い。本学図書館には彼の著作集や『LIFE』誌の戦争報道写真集も所蔵しており、特に『LIFE』には日本人でピューリッツァー賞を受賞したカメラマン沢田教一の写真も掲載されているので、合わせて興味のある方は一読されたい。最後に、本書に限らず報道写真集は、食事の前に見るのはお勧めできません、念のため。(村木伸嘉)