感動と興奮を呼ぶミュージカル、「ライオン・キング」

2年 岩佐直子

 今から4年前、ニュー・ヨークのブロードウェーでアニメとは全く違うミュージカル「ライオン・キング」が生まれた。驚くべき手法で斬新な演出をみせたのは演出家のジュリー・テイモアだった。彼女自身、「これは単なるアニメの舞台化ではなく、原作は同じであるが、新しく書き下ろされた戯曲をもとにしたミュージカルである」と言っている。そして、98年のトニー賞では最優秀作品賞はもちろん、衣装から舞台装置にいたるまで主要6部門を受賞した。女性がこの最優秀演出賞を受賞したのはこの賞の52年間の歴史の中で初めてのことであった。

 この作品はディズニーのアニメをモチーフにしているが公開前には、俳優がぬいぐるみを着て歌い踊る子供だましのようなものになるのではないかと言われていた。しかし、奇跡が起こった。ジュリー・テイモアはそういう偏見に打ち勝つことのできる才能の持ち主であった。

 アニメ「ライオン・キング」の登場人物は全て動物であり、そのアニメの劇化はミュージカルには向いていないので、新しいアイディアを持つ演出家が必要であった。その点、ジュリー・テイモアは想像力を持つ演出家であったのだ。もともとデザイナーである彼女は人形、仮面、衣装、装置も手がけた。彼女は日本やインドネシアで演劇の勉強をしたことがあるので、このミュージカルには文楽、歌舞伎、ジャワの影絵芝居や人形劇の手法が生かされている。パペット(人形)やマスクを使う彼女の手法やアイディアはブロードウェーの伝説を打ち破った革命的なものだった。俳優たちはマスクをつけたり、パペットを操ることによって動物を演じるのだが、決して動物になりきるわけではない。ライオンのマスクは人間の顔を全て覆い隠すものではなく頭の上に載せられていて、観客はマスクと共に俳優の表情の変化も同時に観ることができる。これらの手法や衣装や音楽によるアフリカ色の濃い演出がこの舞台を多彩なものにした。アフリカの大地を舞台にしたこの物語は、生命の誕生、魂の永続性、親子の絆、そして主人公の心の成長を綴っており、観る者に本来の自分の姿、生きる意味をもう一度見つめ直すきっかけを与えた。

 日本にブロードウェーと同じ演出の「ライオン・キング」が上陸したのは98年の12月だった。現在も東京と福岡で劇団四季による公演が行われている。私はこの夏、福岡で「ライオン・キング」を鑑賞した。幕が上がり、私は驚きと感動で涙が止まらなくなった。「ライオン・キング」は想像を超えた舞台だった。そして見終わった後誰もが幸福な気分に浸ることができるエンターテイメントだ。「ライオン・キング」は、今までミュージカルを観たことのない人もきっと魅了される作品である。


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